「カスタマーサクセスという言葉を最近よく耳にするけど、具体的にどのような仕事なのだろう」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで「カスタマーサクセスの仕事内容」や「未経験からチャレンジできる仕事なのか」といったことについて、カスタマーサクセス経験者の渡部真子さんにお話を伺いました。
渡部 真子さん Webマーケティングツールのカスタマーサクセスとして活動。プロフェッショナルサービス領域へチャレンジしながら、Webライター向けのオンラインサロン「ライター組合」の取材部部長としても活動中。Twitterはこちら |
ーーそもそもカスタマーサクセスとはどのような仕事なのでしょうか?
カスタマーサクセスは「お客様に自社サービスを長く使ってもらうこと」を目的に、様々な手段を活用してアプローチを行い、お客様自身の課題解決を支援するお仕事です。
よくカスタマーサポートと比較されますが、「こちらからお客様にアプローチをかける」という点がカスタマーサポートとの違いの1つとして挙げられます。メールや電話といった非対面の手段だけでなく、お客様の元に足を運んでツールの使い方についてご説明させて頂くことも多いです。
「コンサルや営業と何が違うの」と聞かれることもあるのですが、コンサルとの大きな違いは「代わりにやってあげない」ことが挙げられます。
コンサルの場合、お客様の代わりに考えたり提案したりするものです。一方でカスタマーサクセスは、お客様に対して「自分で課題を解決するにはどうしたら良いのか」の手助けしか対応しません。
また営業との違いは、ツールを売るだけではなくて「より長く使い続けてもらう」ために活動するといった点が挙げられます。カスタマーサクセスは新規の導入商談などは行わず、既存のお客様に対して長く使い続けてもらうためにアプローチを行います。
例え話をすると、コンサルはミシュランのお店に行くようなものかと思います。お店に行くだけで美味しい料理が出てくる、これがコンサルの仕事のイメージに近いです。
一方でカスタマーサクセスの場合は、「このような美味しい料理があります。作り方を教えますので、みなさんご自宅でやってみてくださいね」といった、お料理教室のイメージです。
ーー真子さんの場合はどのような方法でお客様にアプローチしていましたか?また足を使って訪問する場合、どのような作業をするのですか?
私の場合は、非対面と対面の手段を併用したハイブリッド型です。基本はメールや電話、訪問の3つを駆使してお客様にアプローチしていました。
訪問時に何をするのかというと、お客様に対して自社サービスのレクチャーを行います。
会計ソフトのカスタマーサクセスの場合がイメージしやすいかもしれません。このケースですと、お客様は経理部の皆さんです。そこで実際に経理部の皆さんが「月次決算をするための経費精算レポートを作る」という手段として、自社が提供しているサービスの使い方を紹介するレクチャー会を行います。
お客様の会社へ伺う前にメールや電話で課題をヒアリングしておき、訪問時(レクチャー会当日)にさっと解決する、といったこともあります。またディスカッションベースで「何から始めると良さそうか?」というワークショップ会をすることも少なくありません。お客様の隣に座って見ていると、実際のツールの操作方法が分かるので「こうした方が良いですよ」とその場でレクチャーしやすい点が、お客様企業へ直接訪問するメリットです。
コロナ禍になってからはほぼ非対面で完結していますが、それ以前の割合としては、訪問と電話・メールの割合は半々ぐらいでした。
ーー訪問してレクチャー会を実施するなど、カスタマーサポートのような業務も行っていたのですね
そうですね。ただカスタマーサポートのイメージとしては「一問一答」で、カスタマーサクセスの場合は「併走する」といった感じです。
カスタマーサポートは、あくまで頂いた電話やメールでのお問い合わせに回答して終わりとなります。一方でカスタマーサクセスの場合は、お料理教室の指導員のようなイメージで、相手ができるようになるまでずっと近くにいる人です。
「ちょっとここの機能がよく分からないです」だと、カスタマーサポートとカスタマーサクセスのどちらに質問しても問題ありません。一方で「このツールを活用してこんなことができるようになりたいんだけど、どうしたら良いだろう?」といった、抽象的な疑問をヒアリングして一緒に考えて解決していくのが、カスタマーサクセスならではの仕事領域です。
ーーカスタマーサクセスのやりがいや魅力について、エピソードがあればお伺いしたいです
まずはやりがいについて。私の場合ですが、自社のツールを活用した結果、お客様が社内で評価されたりお客さん自身が自社で評価されたりする。そしてお客様から「良かったよ」というお声を聞くのが嬉しかったです。
「〇〇さんのおかげでできるようになりました」と言われるよりも、私たちが提供している手段(ツール)を通して「お客様の業務のお役に立てた」と感じられる時が、私は一番やりがいがありましたね。
カスタマーサクセスの魅力ですが、「他の職種に移りやすい」ことが挙げられるかと思います。
私はカスタマーサクセスを6年間やってきましたが、年次によって仕事内容は異なりました。カスタマーサクセス組織の成長フェーズや、ツールに求められる役割が年次によって変わってきやすいからです。
たとえば前職の場合だと、担当していたお客様対応の他に、イベントの企画やお客様への情報発信、オプションサービスの活用事例を公開するなど、プラスアルファの交流につなげる部分を担当していました。そのため、様々な業務に関する知見が貯まりやすく、他の職種へのキャリアチェンジを行いやすいという一面があります。
カスタマーサクセスの間ではよく「ネクストキャリア」と呼ばれるのですが、「最初は1社1社のアプローチから入って、その後に別の職種に移る」といったことも行いやすいです。
たとえば未経験からカスタマーサクセスになり、そこから企画や製品開発、マーケティング方面へのキャリアチェンジも可能です。もちろん「未経験からカスタマーサクセス組織のトップに上り詰める」といった王道のキャリアも描けます。
ーーカスタマーサクセスのなり方について、そもそも未経験でもなれるものですか?
未経験でカスタマーサクセスになる人が多いですね。むしろ未経験の人しかいないぐらいです。
そもそもアメリカからカスタマーサクセスの概念が日本に上陸したのが2019年ぐらいです。なので、それ以前にカスタマーサクセスという肩書きを持って日本で働いていた人は、ほぼいないと考えてよい状態かと思います。新しい職種なので、未経験からカスタマーサクセスになる人が多いです。
また最近はIT業界に限らず、人事系の転職エージェントなどにも(カスタマーサクセスという言葉が)広がっていますね。求職者を次の職場につなげるまでの流れや従来は「キャリアコンサルタント」と言っていたものを、「カスタマーサクセス」という名前に変えたりとか。どんどん定義が広がっている印象です。
最近カスタマーサクセスという言葉がバズワードになっていることに加え、「言葉からイメージが湧きやすい」といったユーザーの声もあります。
さらに、これはカスタマーサクセスの魅力にも繋がりますが、未経験の人でも「今までの経験が何かしらの形で活かせる」という特徴があります。
「カスタマーサクセスは総合格闘技」と言われるほど、様々な職業のかけ算でできあがっているものです。たとえばライター経験者の場合だと、事例取材記事を制作して他のお客様に広く情報を届ける仕事ができるかと思います。
また営業職の場合は、1社1社に対して追加契約を促す経験や契約更新などの交渉力が活かせるものです。システム系の仕事をしていた人の場合は、メールマガジン配信やデータ分析などのシステム周りを扱うような仕事もできます。
よってカスタマーサクセスは、未経験でも過去の様々な経験が活かせる職業だと思います。
ーー真子さんがカスタマーサクセスになったきっかけについて
私がカスタマーサクセスになったきっかけは、実は会社の人事異動です。最初は営業職として入社したのですが異業種だったため、カスタマーサポートを経て、その後にカスタマーサクセスになりました。
カスタマーサポートだと一問一答形式でお客様からお問い合わせがくるのですが、それだけでは自社のツールを長く使って貰えない、いわゆる継続率が課題になることがあります。そこで「アメリカでカスタマーサクセスという概念が流行っているらしいから、日本のウチの会社でもやってみるぞ」という流れになり、異動することとなりました。
未経験からカスタマーサクセスになる場合の参考までに、異動の対象として白羽の矢が立ちやすい人の特徴を挙げるなら「カスタマーサポートや営業職の経験がある人」かと思います。既存のお客様の売上を伸ばすことが得意なタイプは、カスタマーサクセスとして転職したり部署異動を狙ったりしやすいのではないでしょうか。
ーー今やっているとことと今後の目標についてお伺いできると幸いです
今やっていることで言うと、私はカスタマーサクセス部隊には所属しているのですが、データ活用業務を担う部門で学んでいます。
お客様にカスタマーサクセスの専任担当がつく場合は、料金プランにもよりますがツール費用に含まれているケースが多いです。一方で「追加費用を払うので、ここまで支援してください」といったお客様からの要望もあります。このような要望に応えるのが、現在の仕事内容です。
広義では今の仕事もカスタマーサクセスですが、「ツール契約するのに加え、プロとしてより深い利活用まで支援する」という点から、どちらかというとコンサルに近いです。
今後ですが、転職したばかりなので、まずは自らが学び、高度なデータの利活用の方法を理解することが目標です。その後は、ツールだけでなくお客様の抱えている抽象的な課題に対して、プロとしてアドバイスができることを目指してがんばっていきます。
「カスタマーサクセスは様々な他の仕事に移りやすい」とお話ししましたが、私の目標は「より課題を解決する手段として、データ活用を自分でできるようになる」ことです。
将来はプロとして、ツールのより深い利活用をお客様に提案できるようになるのが目標です。そのため現在は、新入社員として修行中の身であります。
\渡部真子さんの活動を見てみませんか?/