株式会社ワークキャリア取締役社長に聞く、コワーキングコミュニティ「hinode」の魅力

本記事は、宣伝会議「編集・ライター養成講座」の卒業制作として作成したものです。

【追記】2024年3月29日をもって、コワーキングコミュニティ「hinode」は営業終了となりました。

「納得感のあるスキル選択をできるところが、ワークキャリアの良いところであり、長く事業に関わっている理由です。」

こう語るのは、株式会社ワークキャリア取締役社長でありコワーキングコミュニティ「hinode」店長である、行武亜沙美氏だ。

ワークキャリア(旧田舎フリーランス養成講座)は、自分に合った働き方の実現をサポートする講座だ。同講座は「人生の選択肢を広げるキャリアスクール」として、スキルを学ぶだけでなく自分のキャリアに向き合う機会の提供も大切にしている。

受講料は198,000円(税込)で、6ヶ月間の分割払いも可能だ。ライティングやサイト制作、Webデザイン、動画編集といった講座を、1ヶ月間の現地合宿スタイルで行っている。ワークキャリア開催地の中でも、千葉県いすみ市にあるコワーキングコミュニティ「hinode」は、フリーランスの間でも話題に挙がることが多い。

hinodeを運営している株式会社Ponnufは、以前はワークキャリアの前身である「田舎フリーランス養成講座」も提供している会社だった。現在は分社化しており、株式会社ワークキャリアがワークキャリアの事業を、株式会社Ponnufはhinodeなどコミュニティ運営事業などを行っている。

ワークキャリアとして事業を独立させたことで、「田舎フリーランス養成講座の時よりもレベルアップした。受講地によるクオリティのバラつきも抑えられるようになった」という。また、行武氏によると、ワークキャリアをきっかけとした千葉県いすみ市への移住は「増えている」と語る。いったいどういうことなのか、現地へ行き取材を行った。

行武亜沙美さん
1985年、徳島県生まれ香川県育ち。日本大学芸術学部卒業。新卒でインテリアショップ店員として勤務し、結婚後は専業主婦に。
パートタイマー時代に“『発信力をアップさせる』ゼロからのやさしい図解”を執筆し、SNSで話題になったことをきっかけに独立。フリーランス、会社員を経てパラレルキャリアを築く。
現在は複数企業に所属しながらコワーキングスペース、オンラインサロンのマネージャーを担当。フリーでシェアハウス運営や講師業も行っている。
(画像・本文引用:WORK CAREER

コワーキングコミュニティ「hinode」。施設周辺にはプールや広い庭があり、開放感を感じた。

千葉県いすみ市は、東京駅から特急電車を利用し、約90分の場所にある。千葉県のJR大原駅(いすみ市)で下車した後は、20分ほど歩くとhinodeに到着する。

hinodeから徒歩で約5分の場所には海水浴場があるせいか、施設周辺では潮風を感じた。

大原海水浴場。「hinode」から徒歩5分以内の場所にある。

「hinodeでは、ワークキャリアの講座と会員主催のイベントが主に行われています」と行武氏は語る。

正面玄関を入った共用スペースには、大勢が集まりやすいようテーブルや椅子が並んでいる。取材日当日、別室ではワークキャリアの受講生たちが講座を受けていた。

「hinode」に入館してすぐの共用スペース。外の景色がよく見えており、開放感がある。

コワーキングコミュニティで生まれる、新たなつながり

コワーキングスペースや公民館といった施設とhinodeはどう違うのか、行武氏は語る。

「私たちはhinodeのことをコワーキングコミュニティと表現しています。hinodeに訪れた人同士でつながりが生まれて、そこから新しいイベントやコラボレーションが発生する、といったところを意識しています。」

単なる作業スペースのひとつではなく、利用する人同士の交流が生まれるようコミュニケーションをとることも意識している、と行武氏は続ける。

「いわゆるコワーキングスペースは、個人の仕事をする場所というか、シェアオフィスというイメージがあると思います。一方、私たちはコミュニティという概念を大切にしており、hinodeに来た人同士のつながりを意識しています。」

では、hinodeでは利用者同士の交流が発生するよう、どのようなことを意識しているのだろうか。

「hinode」内にある自習スペース。集中して作業することもできそうだ。

「ただスペースを貸すだけではなく、利用者がどんな人なのか情報を吸い上げることを意識しています。できるだけ訪れた人に話しかけて、今どうしているのかな、この人は今どういうことをしていきたいのかな、といった視点から、利用者とコミュニケーションをとるよう意識しています。」
  
ただし、最近は他の人に仕事を任せていることも多い、という。

「私が店長になった最初のころは、私自身が積極的に利用者へコミュニケーションをとっていくことが多かったです。ただ、最近は移住者の中で自分と同じような働きができる人がその役割を担うことが多くなりました。
今は比較的、利用者へのヒアリングについては他の人に任せることができています。」

ワークキャリアをきっかけとして、いすみ市へ移住するフリーランスが増えている、と行武氏は語る。

いすみ市で行われているワークキャリアの講座は、1ヶ月間の現地合宿スタイルで行われている。

hinodeから徒歩3分の場所にあるシェアハウスにて、受講者同士は寝食を共にする形式だ。仕事でどうしても参加できない日がある時は、事前申告さえ行えば欠席しても問題ない。

1ヶ月間いすみ市に住むことで、実際に生活するイメージや現地での人脈を持ちやすくなるのだろう。

hinodeを利用する人の多くはフリーランスで、年齢や仕事の分野はバラバラだという。

「自立した個人として生活している中で、お互いに助け合えるところは協力していこう、といった空気感があります。年齢や性別を理由に浮いてしまうことは、あまり無いかなと思います。」

hinodeには「だれが来てもウェルカム」という雰囲気があると、行武氏は語る。実際に、取材時に筆者が訪れたときには多くの人が談笑しており、雰囲気が良い場所だと肌感覚で実感した。

「hinode」共用スペース。写真奥が玄関。取材に訪れた時は多くの人が談笑しており、居心地のよさそうな雰囲気を感じた。

ワークキャリアは「はじめの一歩を踏み出したい」人をサポートする

hinodeで行われているワークキャリアの講座は、基本的にフリーランスをはじめたて、もしくははじめようか検討している人が多く訪れるという。

ワークキャリアは「はじめの一歩をサポートする事業」です

参加者としては、フリーランスとして独立を考えている人が多いですね。ただ、中には副業の力をつけたいとか今後の自分のキャリアを受講期間中に見つめ直したい、という想いを持った方もいらっしゃいます。」

ワークキャリアの公式ホームページを確認すると、フリーランスの他にもノマドワーカーや副業を始めたい方にも対応しているようだ。フリーランスに限らず、独立に向けて初めの一歩を踏み出したい人をサポートするという意気込みが伝わってくる。

現在ワークキャリアの講座受講を検討している人に向けて伝えておきたい事はあるか、行武氏に伺った。

「自分を見つめ直す機会と環境が整っていることと、コミュニティを通じて自分とは異なる環境の人とふれ合えることが魅力としてあると思います。」

また、ワークキャリアを受講する魅力は「自分の納得感があるスキルの選択ができる」ことが挙げられるという。

「今はフリーランス向けのオンラインスクールも多くあるので、スキルを学ぶだけなら必ずしもワークキャリアである必要はないと思います。」

行武氏は続ける。

「今後30年や50年といったスパンで自分の人生を考えたときに、どの方向に進みたいかを、受講生の方とメンターが、一緒になって考える。将来なりたい姿が見えたら、そこから逆算して今取得すべきスキルを学ぶ。

納得感を持ってスキルを選んで貰えることが、ワークキャリアの非常に良いところだと思っていますし、私が長く事業に関わっている理由でもあります。」

将来なりたい姿を明確にするため、週1回の面談や散歩にいったときなど、こまめにヒアリングを行っているという。また、ワークキャリアを卒業した後は、フリーランスとして独立するだけでなく、まずは組織の中に入る、といった提案も行っているという。

実は、ワークキャリアになる前の「田舎フリーランス養成講座」では、「完全にフリーランスの独立をサポートすることを目指したプログラムだった」と行武氏。

フリーランスという働き方に憧れを持っていたとしても、独立に向く性質をもっているかどうかは分からない。
また、講座を受講して「やはり自分にはフリーランスは向かない」と考えをあらためる人もいる。

このようなケースに対して「私達はフリーランスの独立をサポートする講座だから、と切り捨てるのではなく、一度組織の中で働いてみることも提案する」と行武氏は語る。

「私達は「人生の選択肢を増やす」ことをコンセプトに掲げているので、「講座受講後はフリーランスにしかなれません」というのは、それに反します。
田舎フリーランス養成講座からワークキャリアになって、フリーランスになるだけでなく、まずは企業に就職したり組織の中に入ってスキルアップしたりする手もあるよ、といった提案ができるようになりました。」

hinode店長として今後目指しているもの

今後hinodeの店長として目指している目標などはあるのか行武氏に伺ったところ、「村を作っていきたい、と考えている」という。

「hinodeやワークキャリアをきっかけに移住した人の在住年数が長くなると、それぞれのライフステージも変わってきます。
教育施設や育児施設がもうちょっと欲しいな、といったニーズが今後出てくる可能性はあると思います。」

まだまだ足りないものがたくさんある、と行武氏は語る。

「足りないものをひとつずつ実現していくと、結果として村みたいになると思っています。」

身の回りで足りない施設やサービスを充実させたい、と語る行武氏。ただし、ビジネスとして取り組むという捉え方はしていない、という。

「ビジネスとして取り組む、というより「自分の両手の範囲にいる人を大切にしたい」という想いの方が強いです。

自分が大切にしたい人たちが「長くこのコミュニティにいたい」と思ってもらえるような場所を作っていきたいです。」

hinode周辺には、今後新しい施設が生まれるかも知れない。

実際に訪れて実感した、千葉県いすみ市の魅力

行武氏へのインタビューを終えて、筆者は千葉県いすみ市に移住を決める人たちの気持ちが、少し分かったような気がした。

東京駅まで電車で1~2本で到着するというアクセスの良さ、海と山があり自然が豊かであるという点も魅力である。

実際に大原駅近辺を歩き回ったところ、コンビニやファミレスといった商業施設もあり、日常生活を送るうえで不便を感じることは無さそうだ。

また、千葉県いすみ市では「クラウドソーシング手数料助成事業」を行っており、条件を満たした人に対してクラウドソーシング手数料を最大24ヶ月間助成している

クラウドソーシングとは、オンライン上で仕事の受発注ができるプラットフォームのことだ。個人が企業から仕事を獲得できる手段の一つである一方、報酬の一部がプラットフォームの手数料として徴収される。

いすみ市の同事業では、上限が設定されているものの、クラウドソーシングの手数料が一部補助されるため、フリーランスとしてはありがたい制度だ。

また、家賃相場も安い。行武氏によると「3LDKで5万円台、といった安い物件もある」という。地域にもよるだろうが、都内で部屋を借りる場合は1Rでも5万円で借りるのは厳しいだろう。

2022年7月時点で調べたところ、千葉県いすみ市では1K~2DKの部屋で家賃2万円台から、という物件も確認できた。収入が不安定になりがちなフリーランスにとって、家賃が安いのは大きな魅力といえる。

豊かな自然に都市部へのアクセスの良さ、クラウドソーシング手数料の助成、安い家賃、hinodeを中心としたコミュニティなど、フリーランスの移住先として魅力的な要素が揃っていることを筆者は実感した。

自分のキャリアを見つめ直す機会として「hinode」という場所やワークキャリアという機会がある。千葉県いすみ市には多くのフリーランスが移住している。

このことを、新しい一歩を踏み出すことを考えている人に知ってもらいたい。

■『hinode』
住所:〒298-0003 千葉県いすみ市深堀1712−1
TEL:0470-64-6757
定休日:不定休
営業時間:9:00~18:00
公式HP:https://hinode-isumi.com/
料金表
・月額会員:10,000円
・半月会員:6,000円
・コミュニティ会員:3,000円
・ドロップイン:1,500円
電車でのアクセス
・東京駅~(JR特急わかしお)~大原駅~(徒歩)~hinode
・東京駅~(JR総武線快速)~上総一ノ宮駅~(JR外房線)~大原駅~(徒歩)~hinode
・東京駅~(JR京葉線快速)~蘇我駅~(JR外房線)~大原駅~(徒歩)~hinode
車でのアクセス
首都高速~首都圏中央連絡自動車道(約1時間50分)
*写真は2022年取材時